国土交通省はi-Constructionのさらなる推進に向けて、「CIM導入ガイドライン」などを公表した。JACIC研究開発部では、受託業務を通じてCIM導入推進委員会や『CIM導入ガイドライン』策定等の支援を積極的に行っているところである。2017年度は、2016年に英国が義務化したBIM Level2に続くBIM Level3の政府戦略と国際標準会に向けたデータ共通プラットホーム構築（CDE）に関わる事調査結果を報告する。

1）Digital Built Britain (DBB)
　DBBは2016年に英国が義務化したBIM Level2に続くBIM Level3の政府戦略を策定する組織である。

2）National BIM Standard (NBS)
　NBSの前身はNational Building Specificationにあり、40年以上の間、建築業界をサポートするNBS製品を開発し、生産してきた。NBS仕様製品は、建設、エンジニアリングサービス、ランドスケープデザインをカバーしている。
　NBSの業務は、建設業界に対するガイダンス、標準ドキュメントの提供が主であり、オーナーはRIBA（英国建築士協会）である。

　BIMは、300万人以上を雇用する極めて重要な部門であり、2010年に英国経済に1070億ポンドの経済効果をもたらし英国建設業界を変革している。今後10年間でこの技術は、センサやその他の情報を提供するインターネット、高度なデータ分析、デジタル経済と結びついて、新しい社会基盤をより効果的に計画し、より低コストで構築し、より効率的に運用し、維持することになる。BIMは高度なコンピュータシステムを使用して社会基盤の3次元モデルを構築し、その設計、運用、および現在の状態に関する大量の情報を保持するようになる。設計段階では、設計者、所有者、利用者が協力して、可能な限り最良の設計を行い、施工前にコンピュータで確認することができる。工事では、エンジニア、請負業者、材料業者は、廃棄物を削減し、ミスを低減する複雑な部材を統合することができる。供用中は、利用可能なサービスや維持管理者に関するリアルタイムに情報を顧客に提供し、資産の状態を正確に評価できる。
　2011年に政府の建設戦略は、2016年までにすべての公共部門事業にレベル2 BIMの使用を義務づけた。この大胆な決定は、政府と建設業界が共同で業界のスキルを発達させ、建設投資を削減することにつながった。BIMは、内閣府が最近発表した2013・14年の建設費の804百万ポンドの節約に大きく貢献していると認識されている。司法省は、BIMがCookham Wood Young Offenders Institutionの開発に80万ポンドの節約を可能にしたと判断している。
　この革新的な技術は、CrossrailやHS2のような新しい鉄道プロジェクトの開発の中心であり、インフラと建設のためのデジタル技術の開発における英国の主導的役割として確認されている。このDBBの戦略は、これらの技術を統合する次のステップに進み、社会基盤の開発と建設への取組みを変え、これらの分野における世界の主導者としての英国の地位を不動のものにする。
　英国は、完全にコンピュータ化されたやり方を標準化し、これらの技術の利点が英国全土で感じられ、これらの技術の輸出とそれに基づくサービスを支援したいと考えている。専門知識と最先端技術を世界中に販売し、2025年までに15億ドル規模の世界建設市場を獲得したいと考えている。

1）NBS-National BIM Library
　英国政府の要求とは直接関係が無いが、BIMには必要だろうということで無償の標準化されたBIMオブジェクトを「NBS-National BIM Library」として提供している。現在は7,540モデルが登録されている。ライブラリを検索するサイトもあるが、主なソフトでは直接参照でき、ドラッグ＆ドロップで使用することが可能である。本ライブラリのビジネスモデルは、提供する機器・材料等の製造会社から利益を得ている。また、ライブラリの属性情報は、COBie、IFC、Uniclass2015と関連付けられている。

NBS-National BIM Library

2）BIM Tool Kit
　NBS BIM Toolkitは、レベル2のBIMプロジェクトで誰がいつ、何をやっているのかを簡単に定義するツールで、UK政府（InovateUK）が初期に資金提供したもの。公共および民間セクターの建設プロジェクトに役立つ無料のツールキットは、資産ライフサイクルの各段階で情報の開発と提供の責任の定義に加え、管理そして運用を検証するためのステップバイステップのヘルプを提供している。 英国ではプロジェクトは8つのステージに分類されることになっている。計画、設計、施工、受け渡し、利用等の各ステージで、英国の技術者はそれぞれのステージが何を意味するか全て把握している。

RIBA　Plan of Work　2013