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国際動向 2016年度(平成28年度)

 2017年度の海外動向調査では、buildingSMART Internationalへの会議参加と最新動向の収集に加え、米国・欧州において各国、各州のCIMの導入状況等を調査した。さらに、欧州調査で把握された、イギリスの「2016年春からのBIMの政府調達への適用」についての情報を補完するために、British Standard(BS)文書の調査を行った。
 2018年度、国土交通省では「ICT土工」の全面的な実施やCIM導入推進委員会を通じた『CIM導入ガイドライン』の策定など、ICTを活用した労働生産性の向上に関する施策をより一層推進している。これらICTを活用した取組みについては、国内のみならず海外政府や標準化の動向を常に把握しておく必要がある。
 ここでは、フィンランドにおけるBIMの動向を報告する。

(1)FTA(Finnish Transport Agency、Liikennevirasto)

 Liikennevirasto(フィンランド輸送)を司る フィンランド交通局の新しい構造物マネジメントシステムは、交通ネットワーク上にある高速道路(約78,000km)、鉄道(約5,900km)、水路(約4,000km)、航路(約4,300km)すべての異なる構造物を戦略的に管理することを目的としている。FTAは、効率的に安全で機能的な旅行と輸送を可能にするため、フィンランドの道路、鉄道と水路を維持管理して輸送システムに係る広範囲で開発を行っている。フィンランドは国主導のCIM(BIM for Infrastructure)を産官学で積極的に推進している。

FTA組織概要

FTA組織概要

フィンランド年間交通量マップ、道路ネットワーク

フィンランド年間交通量マップ、道路ネットワーク

(2)Infra FINBIMについて

 FINBIM は2014年には全ての発注者が参加して全てのプロジェクト、設計から維持管理までのプロセスにおいてモデルベースでの発注を行うことを目的に2010年から2014年までの4年間の活動が行われた。6つの作業設定を行い6百万ユーロの予算で18組織(発注者、建設会社、建設コンサルタント、ソフトウェア開発ベンダー)が初期に参画して活動を開始した。結果として、FINBIM の取り組みには2千百万ユーロの投資を行い37の企業が参加した。FINBIMの2010年から2014の活動予算の出資割合は政府機関が6割、民間が4割であった。一方、BuildingSMART FINLAND(bSF)の活動予算は2014年から年予算25万ユーロであり、ほとんどが政府機関からの調達となっている。

FTAヘッドオフィス
FTAヘッドオフィス

会議参加メンバー
会議参加メンバー

 FINBIMの成果としてガイドラインにあたる要求書はリリース済みであり、データモデル交換についてはインフラモデル(INFRAMODEL 4)の整備を行っている。図にあるように当初は赤枠の設計段階、建設段階でのプロジェクトを数多く予定した。現在は青枠の全サイクル、特に維持管理に注力している。
 橋梁に関しては2014年にbSIのリリースが無かったことから中心線形要素技術を加えてFTA のBIMガイドラインとして英語版でリリースしている。続くINFRA2015の新プロジェクトは2014年後半に開始してモデルの作成だけではなく情報とプロセスを重要視して検討を行っている。

(3)KIRA-digi

 2016年にはNational digitalization program KIRA-digiと呼ぶプロジェクト、プログラムを開始し2017年から本格的に開始する。これは業界団体が国に要求して出来上がったプロジェクトであり、建築部門と土木部門が共同して行うことが特徴的である。今年度は準備段階のため、8万ユーロ、来年から政府機関から400万ユーロ、民間機関から440万ユーロが調達される。KIRA-digiはモデルの標準化だけではなくデータ登録、連携(図面・文書とのコンポジット)が含まれている。
 EU BIM Task Group(BTF)について、2014年からスタートし2016年から資金調達を受けて正式に開始したbSIが民間団体での標準化活動であるのに対して政府機関での活動ということが特徴でBIMの活用・普及が目的である。EUはトップダウンで進めるという特徴があるがフィンランドでは政府機関から無理な要求が来る前に民間からボトムアップで対応を図るといった活動が中心である。また、EU BIM Task Groupのプロジェクトの中にCEDRグループの道路分野に関する活動がある。ドイツ、ベルギー、オランダ、ノルウェー、デンマーク、フィンランドからの資金調達による「CEDR call 2015」プロジェクトではアセットマネジメントとBIMに関する文書を残している。また、「Interlink:INformation managemenT for European Roads using LINKed data」プロジェクトを2016年8月に開始した。

(4)VT12

 BIMを活用するためのパイロットプロジェクトとして、フィンランドの主要道路「VT12」についてのモデルを紹介された。道路モデル形状の可視化だけではなく、情報の持ち方、持たせ方が重要となっており、道路設計プロジェクトの場合、メタデータ、属性情報を共通的(違うプロジェクトも含めて)な管理で可能かどうかが鍵となってくるとのことである。

既存構造物を含む初期データ
既存構造物を含む初期データ

同一視点の道路モデル(属性表示)
同一視点の道路モデル(属性表示)

 また、プロジェクトに係る土地活用、GISデータと道路モデルとの連携についても検討を行い、活用を行っているが、同じデータであるが異なる呼び方をしていて意思の疎通が図れない状況があり混乱するという問題となることが分かっている。例えば「標高が高い」の言い方は様々あり、標準的に共通利用できる共通辞書、例えばbSDD(buildingSMART Data Dictionary)のような仕組み、仕掛けを検討し実装・運用を目指しているとのことであった。

プロジェクトに関する土地活用
プロジェクトに関する土地活用

GISデータとモデルとの連携
GISデータとモデルとの連携