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国際動向 2013年度(平成25年度)

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土木建築情報学国際会議(ICCBEI2013)の開催

1.アジア土木情報学グループ(AGCEI)の設立
大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻教授矢吹信喜

欧米を中心に土木建築工学における情報技術の応用に関する研究発表の場は盛んである。土木および建築工学における情報技術に関する世界最大の国際会議は、ICCCBE1であり、これまで偶数年に開催されてきている。主催団体は、ISCCBE2であり、各国からBOD(Board of Directors)メンバー(理事)を送り、理事会で意思決定がなされる。日本からは、BODメンバーとして筆者と宮城大学の蒔苗耕司教授の2名が出席している。
ICCCBEは2012年6月にはロシアのモスクワで開催された。2014年6月、米国フロリダ州オーランドで、2016年7月、大阪国際会議場で開催される予定である。

ヨーロッパと米国では、これまで、ICCCBEがない奇数年にも各々、EG-ICE3が国際会議EG-ICEWorkshopを、ASCE4のTCCIT5が国際会議(IWCCE6)を実施してきている。
2011年には、ヨーロッパでは、オランダでEG-ICEWorkshop2011が実施された。米国では、フロリダ州マイアミビーチ市でASCE-IWCCEが開催された。

しかし、アジアにはこれらに対応するような団体や国際会議がないのが現状であった。
そこで、前述のように、2005年度より毎年開催してきたアジア建設IT円卓会議を発展的に解消し、オープンな国際会議をアジアで開催することを2012年8月に決定した。その開催母体として新たにAGCEI7(アジア土木情報学グループ)を、日本、台湾、香港、中国、韓国、シンガポール、オーストラリア等で設立し、奇数年に国際会議ICCBEI8(土木建築情報学国際会議)を開催することとした。AGCEIのBODのPresidentは筆者が務めている。日本サイドは土木学会土木情報学委員会が中心となり、日本建設情報総合センター(JACIC)はコアメンバーである。

国際会議ICCBEIはAGCEIと土木学会土木情報学委員会の共催により開催し、原則として国際会議ICCCBEが開催されない奇数年に実施することとした。また、開催地はアジア国内とし、理事会によって決定し、適宜ローテーションすることとした。第1回ICCBEIは東京において、2013年11月7日~8日に実施することを決定した。

  • International Conference on Computing in Civil and Building Engineering
  • International Society of Computing in Civil and Building Engineering
  • European Group for Intelligent Computing in Engineering
  • American Society of Civil Engineers
  • Technical Council on Computing and Information Technology
  • International Workshop on Computing in Civil Engineering
  • Asian Group for Civil Engineering Informatics
  • International Conference on Civil and Building Engineering Informatics

2.土木建築情報学国際会議(ICCBEI)の開催

国際会議では、発表論文を研究者や技術者から募集し、査読審査を経て、プロシーディングス論文集に掲載される。論文募集に当たって、ICCBEIのスコープを次のように定めた。

ICTの土木、建築、環境工学への応用とし、BIM、CAD、CIM、GIS、GPS、レーザスキャニング、センサ、モニタリング、VR、AR、可視化、情報化施工、ロボティクス、プロダクトモデル、ビッグデータ、協調的設計、HPC、シミュレーション、マルチエージェント、構造ヘルスモニタリング、構造制御

構造解析、地盤工学におけるICT、アセットマネジメント、維持管理、都市計画、施設管理、スマートシティ、エネルギーマネジメントシステム等を含むが、これに限るわけではない。

まず、アブストラクト(要旨)を募集したが、アブストラクトは必須とはせず、論文から投稿することも可とした。第1回の国際会議であることから認知度が低く、例年11月は国内外で数多くの国際会議や国内の講演会・シンポジウムが開催されることもあって、当初はなかなか論文が集まらず、やきもきさせられたが、締切延長後、投稿数が伸び、最終的には80編の投稿があり、査読の結果、70編がプロシーディングス論文集に掲載された。査読は、ICCBEI2013のために構成したInternational Scientific Committeeのメンバーと筆者から依頼した世界各地のボランティアの査読者が実施した。

会議場は、アクセス、料金、部屋数、部屋の大きさ、国際会議への適応度、周辺のホテル等の様々なファクターを考慮し、複数の候補から、東京国際交流館(プラザ平成)を選択した。国際会議の実行に当たっては、ICCBEI実行委員会を構成し、数回の会議により、意志決定を行った。

国際会議では、スポンサを募集するとともに、会議開催を助成する競争的外部資金の獲得を実施し、21の民間企業にスポンサになって頂き、公益財団法人鹿島学術振興財団から助成金を獲得した。スポンサの内、4社は会場に展示ブースを設営した。

実施プログラムは、図-1に示す通りである。

11月6日(水) 夕方:レセプション
11月7日(木) 午前:開会式
基調講演1(国土交通省顧問 佐藤直良氏)
JACIC セッション(パネルディカッション)
午後: パラレルセッション(論文発表)
夕方: 八芳園にてバンケット
11月8日(金) 午前: パラレルセッション(論文発表)
基調講演 2(スイス EPFL Ian Smith 教授)
講演3(Autodesk社 福地良彦氏)
午後: パラレルセッション(論文発表)
閉会式

図-1 ICCBEI 2013 の実施プログラム

会議への総参加者数は、276名で、内日本人は228名、外国人は48名であった。外国人の国別内訳は、以下の通りである。

韓国 20名
中国 8名
台湾 5名
米国 4名
香港 3名
オーストラリア 1 名
ブルガリア 1 名
カナダ 1名
ドイツ 1名
シンガポール 1 名
スイス 1名
オランダ 1名
フランス 1名

11月7日(木)の開会式では、来賓として香港科技大のJay Kuang教授、スイスEPFL(連邦工科大学ローザンヌ校)のIan Smith教授、米国テキサス大学オースティン校のWilliam O’Brien准教授に祝辞を頂いた。図¯2に開会式の様子を示す。

図−2 開幕式

図−2 開会式

図−3 佐藤直良国土交通省顧問の基調講演No.1

図−3 佐藤直良国土交通省顧問の基調講演No.1

続いて、基調講演No.1として、国土交通省の佐藤直良顧問(前事務次官)より、「社会インフラ管理の展望、CIIMのススメ~個別の維持管理から、全体の最適管理へ~」というタイトルでご講演を頂いた。次に、JACICセッションとして、「日本におけるCIMの動向と国際協調によるプロダクトモデルの構築」というタイトルでパネルディスカッションを行った(図-4)。パネリストは以下のとおりである。

座長 矢吹信喜 大阪大学教授
パネリスト 高村裕平 氏 国土交通省 技術調査課 建設システム管理企画室長
山下純一 氏 IAI日本 代表理事
坪香 伸 氏 日本建設情報総合センター 理事
Prof. Patrick Shang-Hsien Hsieh 国立台湾大学教授
Mr. Christophe Castaing フランス EGIS International 部長

図−3 JACICセッション(パネルディスカッション)の様子
図−3 JACICセッション(パネルディスカッション)の様子

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午後のパラレルセッションでは、プロシーディングス論文集に登載された論文の著者が各々4 つの部屋 に分かれて、プレゼンテーションを行い、その後質疑応答が活発に行われた。プロシーディングス論文集は、ハードカバーでカラーページの印刷である。ISBN番号も取得し、販売もしている。表紙と裏表紙の写真を図-5に示す。

バンケットは白金台の八芳園にチャーターバスで移動し、盛大に行った。(図-6)

翌日の11月8日(金)は午前中に3つの部屋でパラレルセッションを行った後、基調講演No.2をスイスEPFLのIan Smith教授により「土木建築工学分野のコンテクストにおけるセンサデータの解釈」というタイトルでご講演を頂いた(図-7)。次に、基調講演No.3はスポンサ企業からということでAutodesk社の福地良彦氏が「インフラストラクチャのライフサイクルのためのBIM/CIM」というタイトルで講演を行った。昼食後、パラレルセッションを行い、最後に閉会式を行った。閉会式では、3編の優秀論文賞と学生を対象とした優秀発表賞(3名)を授与した。

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図-5 プロシーティングスの論文集の表紙と裏表紙
定価6,000円(税別)

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図-7 スイスEPFLのIam Smith教授の基調講演No.2

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図-6 バンケットの様子(八芳園)

3.おわりに
土木情報学における研究成果の発表の場として、日本を中心としたアジアで、世界に門戸を開いた第1回土木建築情報学国際会議(ICCBEI2013)を2013年11月7日~8日に開催するまでの経緯と開催について記した。当国際会議は、関係者の努力の賜物により、無事、成功裏に終了することができた。関係者と参加者、スポンサ、サポータに深く感謝申し上げる。
次回のICCBEIは、2015年5月に東京で開催する予定である。奮って、論文投稿と参加をされるようお願い申し上げる。

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