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CALS/EC効果的事例レポート

第1回
『地元ベンダーを活用して最適化を追求した電子入札システムの構築』(2006/3/1掲載)
千葉県柏市
財政部 契約課 主査 内藤友博 氏
各地方公共団体によるCALS/ECへの取組みがますます本格化している。いまや都道府県はもちろん、市レベルにおいても、各地で意欲的な試みが始まっている。
柏市は千葉県の北西部に位置する人口38万の都市である。同市では電子入札の導入にあたり、独自に地元ベンダーを活用し、電子入札コアシステムをベースに電子入札システムを構築するという他に例のない手法を採用し、大きな成果をあげている。この柏市独自の電子入札システムについて、開発・運用を担当する同市財政部契約課の主査、内藤友博氏にお話を伺った。

受注者と足並みを揃え、スムーズな電子入札導入を目指す
使い勝手と拡張性、低コストを実現する独自のシステム構築手法
地域の実情に詳しく小回りの利く地元ベンダーのメリット
受発注者の足並みを揃えて進めることが成功のカギ
進化する電子入札システムが受発注者双方にメリットをもたらす


受注者と足並みを揃え、スムーズな電子入札導入を目指す

Q. 柏市における電子入札の導入経緯についてご紹介ください。
A.
柏市役所
柏市役所
柏市で電子入札導入に関する調査・検討などの準備が始まったのは、2002年のことです。庁内検討会議として柏市電子入札研究会を発足し電子入札に関わる意見を集約し、さらに電子入札導入計画を策定して、電子入札に関する基本的な考え方を決定しました。また、入札に関わる業務は受注者にとっても大きな問題であり、市内外の各業者の十分な理解と協力を得ながら進めていく必要があります。そこでこの年、市内外の業者約500社に対するアンケートを実施し各社のIT化状況を確認するとともに、電子入札導入の予告を行い、電子入札導入に関する意見・要望を集約しました。結果は、各社ともおおむね賛成の声が多く、このことが導入計画の進行に大きな弾みをつけたといえるでしょう。その一方、電子入札に先進的に取組んでいる各地の自治体を視察して、さまざまなタイプの電子入札システムを調査してそれぞれのメリット/デメリットを研究しました。最終的に地元ベンダーによる電子入札コアシステム(以下、コアシステム)ベースの独自システム構築、という独自の手法を採用。合わせて受注者への教育活動も推進していきました。そして2005年2月から建設工事案件について電子入札を開始し、2004年度は合計3件の電子入札を実施。2005年度は2006年1月現在ですでに約100件を実施しており、この4月からは全件の電子入札実施を予定しています。
なお、業務委託についても2006年1月から一部の業種を対象に電子入札を開始しており、順次拡大していく予定であります。



使い勝手と拡張性、低コストを実現する独自のシステム構築手法

Q. 柏市の電子入札システムはどのように開発を進めたのですか?
A. 電子入札システムの構築にあたって、私たちは以下の3つの方法を検討しました。すなわち(1)コアシステム以外の他市の既存システム応用。(2)コアシステムコンソーシアム正会員のITベンダーによるコアシステム構築。そして(3)地元ベンダーによるコアシステムベースの独自システム構築です。(1)の場合、システムは各自治体の電子入札業務に最適化されていますから、そのままでは柏市にとって使い勝手がよくありません。といって、システムに合わせて業務を変えるのでは本末転倒です。的確に国と歩調を合わせながら、セキュリティ確保の面からも、やはり汎用性が高く、セキュリティが充実したコアシステムをベースとすることが望ましいのではないでしょうか。また、コアシステムを使うメリットとしては、コアシステムの認証用のICカードをすでに持っている企業も多いので、持っている企業は登録が楽に済むというメリットもあります。次に(2)の場合はコスト面が問題になります。当然ですが、導入コストはできるだけ抑えるのが大前提。コンソーシアムに名を連ねるような大手ベンダーは、やはりコストもそれなりになってしまいます。コストダウンを狙うなら共同利用という途もありますが、これはカスタマイズが難しいのが問題です。つまり、柏市の業務に最適化された使い勝手の良さと、カスタマイズしやすい拡張性の高さを合わせもつコアシステムをリーズナブルに――という、いささか欲張りな理想を掲げ(3)を選びました。



地域の実情に詳しく小回りの利く地元ベンダーのメリット

Q. 開発を任せるベンダーの選定にあたって留意したポイントは?
A. 開発を委託したのは柏市に本社を置く第三セクターのベンダーです。選択の理由はもちろんまずコスト抑制ですが、それだけではありません。実は柏市の電子入札システムは、契約管理や業者管理等の既存システムや市ホームページとの連携が1つのポイントです。既存システムと連携させ有効活用し、新たな開発費を抑制しようというわけです。この点、地元ベンダーなら既存システムや市のHP、業務についても実情を知悉しており、このことが大きなメリットとなりました。当初はコアシステムの開発に携わっていない地元ベンダーでシステムが扱えるのか不安もありましたが、これはベンダー自身が努力して信頼に応えてくれました。
内藤友博 氏
内藤友博 氏
また、導入後の運用においてはトラブル対応などフォロー体制が重要ですが、この点も地元企業ならではのフットワークが活かされます。実際、いざという時すぐ来てもらえる安心感は大きいですし、バージョンアップもきめ細かく対応してもらえます。コアシステムをベースとしながらここまで柔軟に現場の声に対応するシステムも珍しいでしょう。もちろん各自治体の環境や事情により異なりますが、実は当市のシステムは既に県内の別の市にも採用されると聞いており、コスト、使い勝手、拡張性、そしてアフターも含め、当市規模の自治体に最適なものの1つと自負しています。



受発注者の足並みを揃えて進めることが成功のカギ

Q. 実際に電子入札システムを導入・運用するにあたって留意された点は?
A. 前述の通り、電子入札は受発注者双方が足並みを揃えて進めることが重要なポイントとなります。そのため準備段階では市内業者全てを対象にCALS/ECと電子納品の勉強会を繰り返し開催し、知識・ノウハウの普及に努めました。具体的には2004年度に電子入札説明会を2度開催し、参加者はそれぞれ約300名ずつ。また電子入札システムの操作説明会も3日間で8回開催し、約300社が参加しました。さらに本格導入前の2005年1月には模擬入札を2回行い、稼働後も月1回ペースで継続的に実施しています。市内のほぼ全ての業者は説明会に参加いただいております。普及は順調に進んでいるといえるでしょう。この点、早い時期に市内業者に対するアンケートを行うなどして、市の計画を周知したことが大きかったと思いますね。またシステム自体に関しては、前述の通り市職員が使いやすいシステムであることを最も重視しています。これは最初にシステムを作る時だけでなく、システム稼働後も現場の要望に応えきめ細かく修正し、強化していくことが重要です。実際に使っていく中でこんな機能が欲しい、こうした方が使いやすいという声が出るのは当然ですから。事実、柏市のシステムは、現在すでにVer4.1となっています。



進化する電子入札システムが受発注者双方にメリットをもたらす

Q. 電子入札導入による効果は上がっていますか?また今後の計画は?
A. この1月に1番札だけを審査する事後審査型(ダイレクト型)にシステムをカスタマイズし、入札に関わる事務がさらに大きく効率化された実感があります。また、波及効果として市役所内で図面等のデジタル化が進行し、ペーパーレスも目に見えて広がりました。一方、電子入札の普及を通じ市内業者のIT化促進効果もあったと思います。電子入札の導入によって、市内業者のITリテラシーは確実に向上しました。また、入札自体、以前は業者はその都度役所まで図面等を取りに来ていたのが、今は居ながらにしてネットを通じ図面が見られますし、公告も開札も毎週木曜なので週1度ホームページを見ればいい――業者側の効率化効果は我々以上かもしれません。今後の計画としては、システム面でまず入札用ページを各社の登録業種のみ表示される形にして利便性を高めます。また、事後審査型の審査システムを強化し期間短縮を図るほか、指名競争入札システムも来年を目標に稼働させます。もちろん普及活動は今後も続けていきます。さらに将来的にはJCIS「CORINS(工事実績情報サービス)」や企業情報とを一体的に検索できる情報サービス等との連携も視野に入ってきます。幅広い分野に協力を得ながら着実に進めていきたいですね。(2006/3/1掲載)