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国際動向 2013年度(平成25年度)

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米国における維持管理システム~COBieについて

米国CIM技術調査2013より

(1)COBie(Construction Operations Building Information Exchange)の概要
社会資本の管理者は、プロジュクトが完成すると、維持管理のために正確な情報が必要である。しかし、今日、一般的に行われているように、完成した時点でこれらの情報を集めようとすると、過去に遡って、調査・設計・施工の各段階の情報を収集する必要があり、たいへんな労力を要する。さらに、担当者の変更等によって、収集できない情報もある。

COBieは、調査・設計・施工の各段階において、設備や機器、その仕様や内容、設計変更等の書類や成果を、標準化したフォーマットに入力、コンバートすることにより、維持管理に必要な情報を大きな手間をかけないでリアルタイムに収集しようとするシステムである。

COBieのイメージ

COBieのプロセス/入力フォーマット

(2)各段階における情報の更新・追加、受け渡し等のデータ連携を実現
調査・設計段階における空間や設備の施工手順等の項目をCOBieに入力する際は、設計段階で活用されているBIMソフトからほぼ手間なく自動的にコンバートできる。
さらに、その入力された項目については、施工を進める中で発生する情報を更新・追加していくことになる。追加する情報は仕様書に定められている提出物や成果、製品番号等の属性情報であり、COBieのフォーマットに問題なく入力、コンバートできる。
最大のメリットは、調査・設計段階で入力された項目をもとに、施工段階の詳細な情報が追加され、この情報を施設管理者が受け取り利用することである。COBieで蓄えられたデータは、維持管理やアセットマネジメントに直接利用できる情報となっている。さらに、プロジュクトの完了と同時に、施設管理者に提供されるものであり、シームレスに効率的に維持管理に移行可能である。必要に応じ、施設管理者はそれらの情報をさらに拡張・発展させる等のカスタマイズも可能である。

(3)COBieの受け渡し情報は設備や機器等の属性情報が主体
COBieのデータ形式は、IFCを基本として開発されたものであるが、設備や機器等のメーカーや製品番号、仕様等の属性情報が主体となっている。ダムの堤体のようなマスコンクリートや建物の壁等の属性情報は含まれていない。その理由として、これらの施設は、管理された施設であり、壊れることは少なく、比較的頻繁に取換えや修理を必要とする設備や機器との管理に違いがあるためである。

(4)COBieは非常にわかりやすく現実的なシステム _~Excelファイルを基本としたシステム~ 調査・設計・施工段階で入力・追加されるデータの標準となる入力ファーマットは、Excelファイルで作成されており、さまざまな段階で関係する多くの関係者が理解でき、使用することが可能な内容となっている。

(5)COBieの本格運用の開始
COBie は、2014年10月から米国陸軍工兵隊が発注するすべての建設プロジュクトで本格的に運用が開始される。この運用の開始までに7年の検討を要している。現在、運用開始に向け、必要なソフト、事前の訓練に関する準備が進められている。COBie形式ファイルの認証については特に問題はないが、それ以上に業界の認識を大きく変えていくことが最も重要な課題である。

COBieのガイドブック

(6)まとめ
日本では、2013年を「社会資本メンテナンス元年」と位置づけ、社会資本の維持管理・更新が急務な社会情勢の中、「CIMの維持管理への活用」については導入・運用が急がれているのが現状である。
COBieは、維持管理での現場での活用と普及等、「多くの人が活用する」を最優先し、Excelファイルをベースにし、決して3次元をベースした「高度なモデル」ではないが、極力使いやすく、必要な情報を極力取り入れる工夫がなされ、維持管理段階で「十分な効果・効率を発揮する」という考え方のもと、調査・設計・施工段階から維持管理段階に情報を受け渡していく現実的なシステムを構築したものである。その構築に約7年間検討期間を要し2014年10月から本格運用しようとしている。
日本でも、3次元モデルを適用する等の完成度の高い維持管理システムの運用は時間もかかり非現実的であることから、すぐに実現可能なレベルで導入・運用を図るべきとの方向で議論が進みはじめている。
日本は、今後、具体化されていくことになるが、米国陸軍工兵隊が本格運用するCOBieは、維持管理システム構築にあたって参考とすべきシステムの一つと考えられる。

【図の引用】配布資料またはE. William East, PE, PhD.“Construction Operations Building InformationExchange (COBie)”. Engineer Research and Development Center, U.S. Army, Corps ofEngineers http://www.wbdg.org/resources/cobie.php 【米国陸軍工兵隊U.S.ArmyCorps ofEngineersの役割】

工兵隊は米国陸軍に属している機関であり、その役割については平和時と戦争時で異なる。戦争時、災害時などでは有事に対する対応の役割を担うが、平時においては日本の国土交通省が行う河川管理、洪水防御などが工兵隊の役割である。工兵隊の主な役割は下記の4つである。

1. 299港湾施設の開発と管理
2. 自然環境の保護と修復
3. ミシシッピ川の閘門、ダムの建設管理
4. 洪水防御と水源地管理

洪水防御については、連邦政府の管轄になっておりダムや水源地などで州政府、地方行政府の所有のものであっても洪水防御の機能が入っていると工兵隊が管理を行うことになっている。土地利用政策に関しては、連邦政府は全く関与せず、地方行政府が行っており、時には州政府が関与する場合もある。
河川の洪水防御、舟運は工兵隊の役割であり、水質保全や河川の動植物の保護については工兵隊も一部役割を行っているが、EPA(環境省)が主として行っている。
(財団法人河川環境管理財団、2004年1月、「米国陸軍工兵隊「河川水理学」エンジニアリングマニュアル調査報告書」より)

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